☆お知らせ☆

すみません。海賊週報の更新を一両日延ばします。

この事態は想定内としか思えません。神様、仏様に祈るしかありません。

「イスラム国」の2邦人人質テロは最悪のシナリオが進んでいますが、昨年11月の選挙の前には現在の状況は想定の範囲内だったはずです。もちろん誰もというわけではありませんが、身代金要求が届いたという情報を知っていた「プロ」の人たちはです。どの国でもこうした国民の生命に関する最終決定は大統領や首相が行います。権力者は決断者であり、結果に対する責任を負わなければならないからです。ですから安倍首相が決断したはずです。最後は会議で決めることではありません。詳細な情報は明らかにされていませんが、「テロには屈しない」」という判断だったと思います。その結果、要求は無視することにしたのではないでしょうか。「無事解放」と「テロに屈しない」という二つの命題は矛盾し、併存させることは至難のことだからです。この二つを同時に言うのは実務的にはあり得ないことだと思います。

それから2カ月。イスラム国は要求メールを出している国の最高責任者が近くに来て、自分たちとの戦いを声高に宣言する場面に遭遇しました。逆上するには十分な光景だったのではないかと思います。「イスラム国」は米国などの有志連合の連日の空撃で約6,000人の兵士を失っています。アルカイダのイラク“営業所”から成り上がり、まるで千年以上も昔の殺戮による恐怖支配で勢力を一気に拡大したものの、暴力支配だけでは統治はできないからです。しかし7世紀のイスラム原理主義を現代に持ち込むことを行動原理とする以上、暴力しか方法はありません。もはや緩い路線に転向することは「死」を意味しますし、“戦争”を仕掛けている以上、敵を殲滅することが目的で、平和な町の中での理屈が通用しないことは自明のことです。

となれば、フランスやトルコは苦労しながら解放にこぎ着けました。トルコは人質交換の要求を呑むしか解決はありませんでした。米英の威勢だけいい政治家の発言が報道されがちですが、それらの国民ももっと現実的で、知恵を巡らした発想で考えています。それは「本当に身代金を支払うのが誤りなのだろうか」とか「払って解放させることとテロを許さないことは切り離して考えるべきではないのか」といった意見が米国にも出ていることです。決して威勢のいい建て前だけではありません。解放を前面に置くなら、それなりの工夫が必要になります。物の言い方も神経質にならざるを得ません。“戦争”という局面の中での実務だからです。

海賊を追いかけてきて、つくづく感じたのはこのクライシス対処の実務能力が決定的に欠けていることでした。それは「平和ブランド・日本」だったためと思います。ハードの兵器を最新にしたり、安全保障関連組織を作ったりすればできるものではありません。軍事訓練で身に付くものでもありません。軍事的なノウハウはすべて繋がっています。情報収集から分析・評価、オペレーションの作成・実行、人質の解放などの最終局面まで、軍事的ノウハウが必要です。例えば、海賊の身代金の受け渡し方法一つを取っても日本はできませんでした。旧札で五百万ドルの紙幣を集めることだって簡単なことではありません。英国が禁止したときにはヨーロッパの金融機関を駆け回って集めなければなりませんでした。多額の現金の移動は各国の法律との戦いでもありますし、受け渡し方法。ネゴシエーターの心理的な駆け引き技術も実務経験の積み重ねがあってこそ可能となります。しかし、日本は実務経験が無い70年間の空白があったたため、口では言えても仕事としては通用しませんでした。そのため専門家はすべて外国人に依頼せざるを得なかったのです。

日本関係の大型タンカーがホルムズ海峡近くでテロ攻撃を受けたことがあります。自国のタンカーが襲われたわけですから、当然捜査にあたると思いました。フランスの大型タンカーがイエメン沖で自爆テロ攻撃を受けたときには、フランスはイエメンと共同で捜査にあたり、結果を世界に発表していたからです。しかし、日本は何もしませんでした。爆発物の組成などを調べることでテロ攻撃かどうかの捜査は進展しますが、爆発物の専門家も派遣しませんでした。確かにそうさは主権に関連しますから、現場の国が一義的に捜査にあたりますが、日本も関係国という主張はできます。しかもそのタンカーはブラジルに長期傭船されていましたので、時間が経ってから日本に来たときに現場検証を行ったようですが、一体何を考えているのだろうか、とあきれ果てました。どこに爆発物が残っているのでしょう。これでは素人の国民を騙したにすぎません。単なるアリバイづくりです。これは民主党政権下でしたから今なら違うかもしれませんが、実務をやるのは現場の人間たちです。要するに欧米のリスク管理のノウハウとは何がズレていると感じたのです。

安倍首相らの持つ国家感では、こうした“技術”も自前で揃えなければなりません。他国は最終的な責任を取る必要はありません。故にすべて自前で対応しなければならないのですが、それが果たしてできるレベルになっているだろうか、と感じます。情報を集め、分析し、目的を成就させるために作戦を立て、それを実行し、修正するというすべての過程で優れていなければとても太刀打ちできませんが、これを整えるのは簡単ではないことです。しかももっとも極限の戦争局面での判断となりますから、より高度な能力・技術が必要になります。一朝一夕には無理ではないでしょうか。これが実感です。仕事をする能力は無いのに世界一の売り上げを上げられると吹聴している社員を見ているような感じがしてならないのです。将来の国家像にはさまざまな意見があるにきまっており、みんなで考え抜いて決めていけばいいと思っていますが、ドラマや小説ではなく、損も得もリアルにシビアなものです。それだけに言う以上はやれる力が背景に無ければマンガになります。

さらに戦前ではありませんから、主権者たる国民に説明しなければなりません。仮に企業ならクライシス(例えばとんでもない不祥事や事故)に遭遇したときには、ステークホルダーに説明しなければなりません。そしてそこに合理性がなかったり、ウソや隠し事があったりすれば、徹底的に追及されます。この仕組みは不公正や不正義を起こさないよう考えられた仕掛けです。民社社会では基本の構図は会社も国もほとんど同じでしょうから、直ぐには無理にしても事実と判断根拠は開示されなければなりません。その際に重要なポイントは、外部評価ができることです。国民がみんな理解できるような話ではありませんので、第三者がチェックすることが必要だと思いますが、ここでも問題があります。そのチェック役はプロでなくては難しいということです。アマチュアがやると感情で判断したり、自分の損得勘定に引っ張られたりすることがあり、本当の素人の国民にはその判断がつきにくいと思います。ところがそのプロがまず足りません。そのため多様な媒体から情報を得ることが必要ですが、政権のメディア支配が着々と進んでいますので、よほど注意深くしないといけないと思います。

ヨルダンが人質交換の拒否を宣言することはないと思いますのでしばらくは動きが止まると考えられます。国家の判断は既に出されていますので、どうすることもできません。神のご加護を祈りたいと思います。

中東などに派遣している企業はクライシスマネジメントを見直した方がいい

「イスラム国」による2邦人人質テロは最悪の方向に向かってしまいましたが、この間のテレビなどのメディアを見て、誤った理解をされている懸念もありますので、私なりの整理をしてみます。限られた時間や文字数の中で説明しなければならず、キャスターの誘導が適切でなかったりしてやむを得なかったのだと思いますが、特異な「イスラム国」と他のテロ組織や犯罪組織の区別が十分されていない感じが強くしました。

まず経済犯罪としての「誘拐ビジネス」は世界中で日常茶飯と言っていいほど起きています。ギリシャなどは1日1件とまでいわれ、そのために極めてビジネスライクに処理されているようです。つまり要求も払えそうな金額ですし、支払いもチャチャッとやってしまいます。保険によるリスクヘッジが可能な国もあると聞いています。これは犯罪グループの犯行です。ソマリア海賊もこの範疇に入ります。もちろん生命の危険が無いわけではありませんが、比較的低いといえます。

次に政治的なグループの資金稼ぎがあります。一時ほどではないですが南米での反政府勢力などです。アジアでも時折起こります。しかしこれは交渉の手立てが残されている場合が多いといえます。それは部族や地域の長老などとの繋がりが切れていないため、簡単ではないでしょうがさまざまルートから攻めることが可能なケースが多かったように思います。身代金の払い方も直接ではなく公共事業やちゃんとした事業への支援といった別の形を工夫しますが、一定のネゴシエーターのノウハウもできていますから、それこそ交渉のプロが対応できます。

ところが今回の「イスラム国」やアルカイダグループは、まったく異なります。宗教が根っこにあり、世界のほとんどは敵ですから、まず誰の言うことも聞きません。怖いものがいません。自分たちが絶対的に正しいと考えています。アルカイダグループはそれでもまだ手の打ちようがあります。宗教指導者のルートで効果があったこともありますし、資金稼ぎという目的に沿って交渉も可能のようです。脅すが殺しては金が取れないことを理解しているということです。金が目的なら人質は簡単には殺しません。

一番シビアになるのが、政治目的の時です。これが最近の「イスラム国」の誘拐です。金が目的ではなく、人質交換だったり、恐怖のプロパンガンダ目的だったりすると手が付けられません。交渉の余地はほとんどなくなってしまいますから、職業としてのネゴシエーターの出番はほとんどありません。誘拐といっても一パターンではなく、それぞれの特性に合わせて対応策を選択するしかないのです。それを一緒くたにしたような専門家の話が多く、違和感を感じました。

拉致される場所や方法についてもそうです。今回のようなケース、ジャーナリストや国際人道団体などは確かにシリアやイラクで狙われますが、北アフリカや中東各国の町の中でも拉致されています。ナイジェリアのボコハラムなどはバイク拉致といって、バイクで近づいてきて一気にさらっていく方法も目立っています。車での拉致も普通に行われています。シリアに入らなければ安全ということはありません。拉致の仕方も千差万別です。

今回のことではっきりしたことがあります。さまざまなイスラム過激派に日本は十字軍メンバーだという認識を持たせてしまいました。つまり「敵」です。いくらそれは違うといっても、安倍首相のパフォーマンスからそう受け止められたということに意味があります。「イスラム国」ばかりでなくアルカイダ系グループも含めて攻撃を受ける可能性がでてきました。シリア、イラクばかりを警戒すればいいのではありません。北アフリカからエジプト、イエメンを始め湾岸各国や中東全域で警戒を強化しなければなりません。

企業で万一、今回のようなことが起きたなら、責任を追及されるかもしれませんし、株主代表訴訟のリスクも高まります。それよりも何よりも社員、職員の安全を守らなくてはなりません。リスクは確実に高まってしまいました。日本に今回のようなテロや交渉・対応を行えるプロはいませんからクライシスマネジメントを見直すのも大変ですが、リスクの質が欧米型になってきた以上、欧米のコンサルを適正な料金で使うことしかないかもしれません。特に中東・アフリカに派遣している企業・団体は緊急に対応することが絶対に必要だと思います。

「イスラム国」、湯川さんは殺害か。後藤さんに処刑写真持たせ公表。ヨルダンで収監中の女性自爆テロ犯の釈放を新たに要求

イスラム原理主義テロ組織「イスラム国」にリンクしたツイッターに1月24日、湯川遥菜さんの処刑写真を持たされた後藤健二さんの画像が公開されました。湯川さんは殺害された可能性が極めて高いと思われます。家族や肉親の方、それに近しい方々のご心痛を思うと言葉もありませんが、このブログでたびたび指摘してきたように今後の日本はこうした政治リスクに伴う犠牲が増えると考えられるため、企業も個人も正面から向き合わないわけにはいきません。

イスラム国は後藤さんについては新たにヨルダンで収監されている女性自爆テロ犯との人質交換を要求しています。英米人殺害の際と少し異なる流れですが、ツイッターのアカウントはイスラム国に連なる人物のものとみられています。ヨルダンを持ち出してきたのは、今回の安倍首相の訪問先であり、人質解放に協力を求めていると公表されていることと関係があるかもしれません。ヨルダンも「当事者」に巻き込まれることになりましたが、既に死刑判決を出しているテロ犯の釈放に応ずるのは難しいと思います。

B8H0sARCYAEU6hQ

新たに釈放を求めたのは、Sajida al-Rishawiと伝えられていますが、おそらくSajida Mubarak Atrous al-Rishawi とみられます。彼女は2005年にアンマンのホテルで57人が殺害された結婚披露宴での自爆テロに関与。彼女は体に巻き付けた爆弾の起爆装置が作動しなかったため爆発せずに逮捕されました。その後ヨルダンの軍事裁判で死刑が言い渡されています。彼女は「イスラム国」の前身のアルカイダのイラク“営業所”幹部の肉親です。

(逮捕後、TVで再現実演を行った)

(逮捕後、TVで再現実演を行った)

後藤さんはこの自爆テロ犯との交換用ということになります。前回の2人のビデオ公開で、身代金目的の人質ではなくなったと思います。身代金の支払いはどうでもよく、政治的に使われることになったのです。昨年11月に後藤さん家族に2千万ドルの身代金要求が来た時には、身代金ビジネスの範疇だったと考えられます。

★イエメン、政権崩壊。ソマリア化の懸念強まる

イエメンのハディ暫定大統領とバハーハ首相が辞任しました。しかし議会は辞職を認めていないようです。 続きを読む

米海軍、水陸両用艦2隻をイエメン近海の紅海に移動

米海軍は1月21日、水陸両用艦2隻を紅海のイエメン近くに移動させました。イエメン・サヌアの米大使館員などの米人避難に備えたものでした。 続きを読む

イエメンのアデン港・空港の業務再開

閉鎖されていたイエメン南部のアデン港と国際空港は1月22日、運航業務を再開しました。 続きを読む

イエメンLNGプラントが操業を停止

アデン湾に面したイエメン南部BalhafのイエメンLNGプラントが1月18日に外国人技術者らの避難の後、操業を停止しました。LNG World Newsが伝えています。 続きを読む

「イスラム国」、混乱のイエメンでリクルート活動を活発化

イスラム原理主義テロ組織「イスラム国」が深刻な混乱状態に陥っているイエメンで“兵士”のリクルート活動を活発化させています。イスラム国は外国人兵士を死亡確率の高い前線に配置しているといわれています。「聖戦戦士は天国に行く」とか言われて、それを信じるのが私には不思議ですが、詐欺商法ばかりでなく、騙すことはあらゆる場面で行われているわけで、ことさら「イスラム国」だけが悪者というわけではありません。騙すにはマインドコントロールが必要で、それを上手に行うのが各国にいるリクルーターの任務です。

兵士として狙われやすいのが不平不満層ですが、“業務”に殺人が入りますので、犯罪経験者が手っ取り早い候補です。そのため各地で刑務所攻撃を行い、脱獄した“経験者”をリクルートしました。しかしそれだけでは足りません。理屈っぽい不平不満層で、殺人に躊躇するような軟弱派には“クスリ”も使われているといわれています。危険ドラッグとは違いますが、ヤク漬けにすれば殺人に躊躇することもありません。兵士の数はテリトリーの拡大に伴って幾らでも必要です。敵対する者は仲間でも殺します。アルカイダが「絶縁状」を出したのもこれが理由でした。イスラム教の聖職者などもお手上げです。長い目で見れば、こんな組織が存続できるはずもなく「徒花」にすぎないのかもしれませんが、騙されてくる“兵士”の数が途切れないならば、終末世界のような状況が生まれてしまう恐ろしさがあります。

ブラック企業と同じようですが、大量退職(イスラム国は死亡による消耗)を補充する大量入社が必要です。リクルート先は各国の出国規制などで狭められてきましたので、新たな“狩り場”が必要になっています。その絶好の場所がイエメンなのです。AQAPにシンパシーを持っている層はかなりいますし、少し落ち目になってきたAQAPよりも勢いのあるイスラム国の方に惹かれる若者がいるためです。各地のアルカイダ系組織では、同様な動きがみられます。組織としてはイスラム国を否定するものの、下部のメンバーはイスラム国へ流れています。その動機は、金だったり、デカいことができそうだということだったり、さまざまだとみられています。宗教的な動機は、公式にはがなり立てますが、しょせん表の動機にすぎないと考えられています。そんな例はどこでも掃いて捨てるほどあります。余談ですが、一見正論のようなことをいう人物の本性がまるで違うことはイヤというほど見てきました。それを見破る層は騙されにくい層ですから、騙す側には扱いにくいのですが、量的には圧倒的にころっと騙される層が多いのです。広告・宣伝の基本もそこを狙いますし、政治も同じです。

混乱したイエメンには、大量の不平不満層がいます。AQAPが押され気味になっている現在、「イスラム国」がその受け皿の代役になり得る位置にいます。AQAPも黙って見ているわけにはいかないようで、衝突する場面も起きてくると思われますが、勢いは「イスラム国」側にあることは確かで、大量の補給エリアが北アフリカからアラビア半島に移行しそうな情勢です。

ソース

★イエメン、国家崩壊寸前。南部のアデン港・国際空港を閉鎖

イエメンの混乱が拡大する一方です。シーア派反政府勢力の勢いが止まらず、大統領はかろうじて仕事をすることが可能ですが、首相は自宅まで反政府武装グループに包囲され、政権は崩壊寸前になっています。地方でも混乱が拡大し、南部では1月20日にアデン港や国際空港が閉鎖されたようです。内戦状態から無政府状態に突入すればソマリアと同じような状況が生まれることになります。イエメンはアデン湾、紅海に面し、海の安全確保の側面からも重要な場所ですから、推移に注目しなければなりません。 続きを読む

← 前のページ次のページ →