[クライシスマネジメントの現場から] 3カ月かけ準備、テナント借り弾薬備蓄?-ケニアテロ

4日にわたったケニア・ナイロビのショッピングモールテロは周到な準備が行われたとみられています。監視カメラには自動小銃と短機関銃、小型バッグを持った武装集団が記録されていました。しかしこの軽装で4日間の銃撃戦を持ち堪えるのは不可能です。まず弾薬が足りませんし、バッグに入る手榴弾の数では足りません。外部から弾薬類の補給がされていたのだろうか、と考えましたが、どうも内部に武器庫をつくっていたらしいと地元メディアは報じています。3カ月ほど前に入居したテナントがあったそうです。どうやらここに少しずつ運び込んでいたようなのです。武装集団は乱射しながらすぐに上の階を目指していました。テナントは武器庫であると同時に軍事拠点を想定していたでしょうから、防御能力も備えていたと考えられます。火力で劣る軍と互角に4日も戦えた理由が分かったような気がします。

(ナゾを報ずるケニア紙)

(ナゾを報ずるケニア紙)

また事件には多くのナゾが残されたままです。制圧が進まない最終局面でケニア軍はかなり焦った攻撃を行ったとみられます。内部で爆発が起き、火災が発生しました。黒煙の量からみてかなりの破壊力だったと考えられます。結果として内部はコンクリートの壁が崩壊し、瓦礫の山になっています。破壊の程度は銃撃戦の後の様相とは異なります。その結果、新たな遺体は発見されていません。それで20人ほどといわれた武装集団のうち射殺された6人以外はどうなったのか?解放されたといわれた人質はどこにいったのか?という疑問が提起されています。解放された、あるいはうまく逃げ出した人質がいたなら、そうした人たちの声が伝えられるはずと思ったのですが、初日以外は聞こえてきません。情報統制がされたのかもしれませんが、これも不思議です。さらに最後は自爆だったのか、攻撃制圧だったのかも説明されていません。空港で多くが逮捕されたという関連容疑者11人の状況もよく分かりません。大統領や大臣の合理的な説明がないこともあって、うわさがうわさを生んでいます。確かに疑問が多く、最終場面で130人以上が殺害されたというアルシャバブの言い分を鵜呑みにはしませんが、全殲滅が行われた可能性を現時点では否定できません。

大規模なテロ事件の最後はよくこういう結末になりますが、犠牲者に外国人、特に欧米人が入っていると合理的な説明が求められます。今回はケニア軍だけではなく米やイスラエルも関与したようですので、公式発表の歯切れが悪くなっているのかもしれませんが、解明を求める国際圧力が強まる可能性があり、まだまだ終わった事件ではありません。地元メディアの情報やアルシャバブ系のツイッターでの発信をしばらくは追いかけざるを得ないようです。

ソース(多数のため、代表的なアルジャジーラ)

☆短信☆ スーダン・ハルツームで反政府デモ激化。24人死亡80人以上負傷

スーダンの首都ハルツームで反政府デモが激化しています。9月25日に市内の病院関係者が明らかにしたところによると、死者は24人、負傷者は80人以上に上っています。 続きを読む

☆短信☆ インドネシアの停泊地でVLCCに賊。乗組員が阻止

インドネシアの停泊地でシップツウシップの作業中のVLCC“ARMADA ALI”(301,963DWT、船籍:マーシャル諸島、マネジメント:ギリシャ・ATLAS MARITIME 、船主:マレーシア・BUMI ARMADA NAVIGATION 、1999年住友重機建造、IMO:9178757)に 続きを読む

プーチン大統領、グリーンピースの「海賊」適用を否定。ただし「国際法には違反」と釘刺す

ロシアのプーチン大統領は9月24日、サレハルハで開かれた第3回国際北極フォーラムに出席し、沿岸警備隊に拘束されているグリーンピース活動家について、「海賊行為ではないが国際法には違反している」との見解を明らかにしました。 続きを読む

☆短信☆ フランスも民間武装ガード容認のようです

フランスも民間武装ガードを容認する流れのようです。 続きを読む

今、アジア海賊が狙うもの。1に現金2にスマホ3はラップトップパソコンだとか

マレーシア近くの海域に出没している海賊や強盗が今、狙っているものは現金、スマートフォンに、ラップトップパソコン、乗組員の所持品だと、マレーシア海事執行庁(MMEA)の担当者は解説しています。 続きを読む

マレーシア沖で武装マスク海賊がタグボート襲う。乗組員縛り3時間人質。母船方式を導入?

マレーシア沖の南シナ海で9月23日午後9時15分頃(現地時間)、航行中のオフショアタグボートに拳銃と長いナイフで武装した8人のマスク姿の海賊が高速小型船で接近し、乗り込みました。 続きを読む

救命ボートの落下世界記録を更新。66メートルから安全に着水

テロの話が続いたあとで何ですが、救命ボートの安全落下テストの動画がありました。ノルウエーを拠点にする海洋安全装置供給会社Norsafeが行ったもので、次世代型フリーフォール救命ボートGES52 を66.8メートルの高さから落下させ、無事着水しました。 続きを読む

ケニアのショッピングモールテロは4日目で制圧。武装集団5人を射殺、11人逮捕

ケニアのケニヤッタ大統領は9月24日夜(日本時間25日未明)にテレビ演説し、ショッピングモールテロ事件を発生から4日目で制圧したことを発表しました。アルシャバブとみられる武装集団の5人を射殺し、別に11人を逮捕しました。死者は来店していた客やスタッフ61人と治安部隊6人の計67人と公表しましたが、赤十字によればほかに60人ほどの行方不明者がいるとされます。死者の中にはイギリス、フランス、カナダ、中国、韓国、ペルー、南アフリカ、オランダ、オーストラリアの国民が含まれます。ガーナの詩人と元国連特使コフィアウーノーも殺害されました。

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大統領は、ケニア情報機関の報告によれば2,3人の米国籍人と1人の英国人女性が武装集団に含まれていた、と述べましたが確認はされていないとしました。また外相は24日に武装集団は20人ほどで、今回のテロ攻撃はアルシャバブ単独の計画ではなく、背後にはアルカイダがおり、「国際テロ計画の一部」だとの認識を示しました。

一方、米国の国土安全保障省(Department of Homeland Security=DHS)は米国内でのショッピングモールなどを狙ったテロに対する警戒を強化しました。

ソマリア海賊をフォローしている当ブログとしては、今回のテロ攻撃がソマリア国内のアルシャバブの戦闘にどう影響してくるのかを分析しなければなりません。ソマリア国内の治安悪化は海賊の発生を助長することに繋がるためです。ソマリアでのアルシャバブは1昨年の首都モガディシュ撤退の頃から内部の路線対立が表面化し、大雑把に言えば強硬派と穏健派に分かれました。強硬派はアラビア半島のアルカイダ(AQAP)と連携し、アルカイダの戦略に同調しようとしました。両派間では互いに暗殺も起きたため戦力は分散され、AMISOM部隊や連邦政府軍に押され気味になっていました。ところが昨年後半から強硬派が盛り返し、今年前半にはソマリア南部で勢力を拡大してソマリア連邦政府大統領の暗殺未遂を計画するほどに復活してきていました。

今回のテロを実行したのは強硬派とみられますので、勢いづくことは予想できます。南部のキスマヨ周辺から北に勢力エリアを延ばしていくと、中部の海賊拠点がある地域が再びアルシャバブの勢力圏に戻る可能性があります。これは好ましいことではありません。連邦政府の制圧エリアは限定的で、軍事力としてもアルシャバブを制圧する力はないといえます。かといってAMISOMを支えるアフリカ連合以外の外国部隊が軍事介入することは、これまでの経緯からみて難しいと考えられます。それだけに今回のテロをアルシャバブがどう総括し、AQAPなどがどう評価するのかが気になります。アルシャバブは一枚岩ではありませんので、路線対立をどう整理し、ソマリア国内でどう動いてくるのかを注視したいと考えます。

ソース

[クライシスマネジメントの現場から]女性テロリストを想定しているか(画像1枚)

最終確定したわけではありませんが、ケニアのショッピングモールテロの武装集団に女性が含まれていた可能性が出ています。(ケニア情報機関のレポート。アルシャバブは「推測」と声明)取りざたされているのは、英軍兵士の娘でイスラム教徒の英国人と結婚し、その夫は別の自爆テロ事件に関与し死亡、その後子どもを連れてケニアに移住した29歳の白人女性、Samantha Lewthwaiteです。“ホワイトウィドウ”となったサマンサは次第にアルシャバブの活動に参加するようになったといわれています(アルシャバブのツイッターにも登場)。《9月26日にICPO手配になったため公開します》

(英メディアが報じた“サマンサ”)

(英メディアが報じた“サマンサ”)

他にも米国人らしい若者も3人ほどいたといわれています。いずれも英語が流ちょうだったようです。アルシャバブはイエメンが源流ですが、ソマリアで活動する中でソマリア人のほかにケニアで若者をリクルートしていましたから、多くは英語は話せても流ちょうではありません。その中で白人の女性でしかも堪能な英語を話せば、テロリストと考える人は少ないでしょう。ケニアはアルシャバブの脅威は十分に感知していたはずです。たびたび脅しは受けていましたし、今年に入ってからアルシャバブの攻撃が激しくなってきていたことも感じていたはずです。アルシャバブの目標は東アフリカでの勢力拡大でケニアでの活動も確認されていました。ですから警戒はしていたはずです。その時に欧米人とみられたことが盲点になったのではないだろうか、と考えられます。3人ほどの男性も当然ですが英語は流ちょうでした。アルシャバブ=ソマリア人という先入観はなかったのでしょうか。

いかにも怪しげなテロリストを想定していては防ぐことはできません。机上訓練の隘路はこうしたところに表れます。アルカイダの司令部になっている「アラビア半島のアルカイダ(AQAP)」が推奨する次世代型テロのキーワードは、「普通」です。アルカイダの前世代が構築した自爆テロが可能なシーンもありますが、都市部では準備が難しく成功確率も低くなります。ボストンマラソンでの攻撃ケースがその走りとみられます。これは普通の市民が手近な道具を工夫して普通にテロ(聖戦)を敢行することを求めてきた“成果”で、「らしくない」兵士がもっとも見つかりにくいことを逆手に取っているわけです。今回は分かりませんが、ブランドもののファッションにブランドもののバッグを持った女性をテロリストとして見分けるのは至難です。しかしこれに対処しなければ未然防止はしにくくなってきています。例えばボディチェック一つとっても男性にはできませんから女性が対応しなければなりませんが、女性の警備担当者は量的に準備されているのでしょうか。「らしくない」テロリストを発見する嗅覚は磨かれているのでしょうか。

自爆テロの外形的な形は取っていなくても、アルカイダなどイスラム過激派のテロは自爆が前提です。死を覚悟した“特攻隊”ですから、最後まで戦います。逮捕で決着することはまずないと考えた方がいいのです。殲滅するかされるかがアルカイダ系のテロとの戦いの本質になります。今回も10人強で4日間戦い抜きました。日本に特殊部隊があるとすれば、この殲滅戦に精神的に耐えられるかが勝負の分かれ目でしょう。犯罪者の精神構造とは異なる攻撃者と対峙するわけですから、逮捕を前提とする警察力では対応が難しい点も出てくるでしょう。ただ人質などで一般人を巻き込む事態も起きますので、事後の説明責任に耐えられる殲滅の仕方が要求されます。これは実戦経験がものをいいますので、今回も米軍がアドバイスに当たりました。相手の武器の種類にもよりますが、瞬時に判断する実戦的な訓練が必要になります。

土曜の昼下がりに買い物に行ったら手榴弾や銃弾が飛んできたわけですから、海外で仕事をする駐在員やその家族にとっても今回の事件は衝撃的でした。大衆が集まる場所全部に金属探知機や爆薬の検知装置を取り付けることは不可能ですから、建物内への侵入を防ぐことは事実上無理です。事後に警備が手薄だったなどの批判が出たとしても、それは後講釈にすぎません。ハイリスクエリアの国では安全は重要な命題です。絶対的な自己防衛の方法はありませんので、とにかく逃げる、隠れるなど命を守ることに必死になる以外にありません。そのためには危険に対する感度を高めておくことは有効でしょうが、それとて絶対ではありません。銃口を向けられたら「平和国家ニッポン」をアピールして敵ではないことを訴えるのもまだ有効期限内かもしれません。とにかく自分や家族の命を守ることです。

※ケニア大統領の会見やアルシャバブの反応、英メディアなどを受けて修正しました(25日午前8時)。

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